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NIPPON PROUD にっぽんプラウド | 日本のモダンデザインインテリア 偏愛カタログ

伝説のインテリアショップ「マイスター」とコマランタン

伝説のインテリアショップ「マイスター」とコマランタン

2022.05.01

文 :NIPPON PROUD 森口 潔
協力:Dwarf

MEISTER(マイスター)のあった目黒インテリアストリート

東京の目黒通りにかつて「MEISTER」マイスターという今や伝説となったインテリアショップがあった。 目黒通りはご存じの方も多いと思われるが、今も60軒ものインテリアショップや雑貨店が点在する一大インテリアストリートだ。 特に1990年代初頭からのミッドセンチュリーブーム、というかイームズのチェアバブル期から徐々に店舗数が増えていったように思う。 イームズチェアのブームというのは当時すさまじいものだった事を今も思い出す。 私がザ・コンランショップに勤務していた1998年にVitra(ヴィトラ)社がイームズのシェルチェアを復刻してコンランでも販売をスタートした時だった。 問い合わせが殺到し、一時売り場や事務所の電話がパンクした。  シェル(シート部分)の素材は? グライド(脚部の先端)は何年製をモデルにしている? 脚部は忠実に再現されているのか? などなどマニアックな質問が多く寄せられてびっくりしたものだった。  ミッドセンチュリーブームがインテリアの世界にも及んだ、そんな時代背景の1997年にMEISTER(マイスター)はスタートする。  

マイスターのオーナーの高坂氏は、アメリカ在住時にイームズ作品と出会い、帰国後ミッドセンチュリーのデザインを日本国内に伝えるべく世田谷の奥沢にマイスターの前身ともいえる「モダン・エイジ・ギャラリー」というショップを開いた方。 そこでお客さんとして訪れた柳 宗理氏と出会い、そこから親交がスタートしたと聞く。 その後このマイスターでは、柳氏のデザインした家具やカトラリー、食器などのプロダクトを常設で扱うようにになり、さらには氏の希望でコトブキ社製のシェルチェアの復刻・販売をするなど独自の活動を展開していった。 

古い民家の内部を改装してモダンな家具や照明と合わせた店内は、飲食など一部には古民家をモダンに改装した店舗も見受けられていたがインテリアショップとして当時とても珍しい存在だったと思う。 そしてマイスターは、ミッドセンチュリーのヴィンテージ家具も扱いながら、ソファやテーブル、照明などの優れたオリジナルアイテムを次々に生みだし、その特色を確かなものにしていった。   

「日本から発信するモダンデザイン」を基本コンセプトに、特ににほんの職人技を活かしたものづくリは他店とは一線を画するものがあったと思う。 当時モダンなインテリアと言えば、ほぼ海外からの輸入品で、イタリアを中心とした中央ヨーロッパのもの、アメリカのミッドセンチュリーのアイテムに北欧の家具が一般的だった。 そんな中、日本のモダンなデザインを生活の道具として扱うショップは非常に稀有な存在だったし、貴重なアイコンでもあった。  戦後の日本人の暮らしが欧米の模倣や追従だけで本当に良いのかというテーゼを掲げているようにも見え、頼もしい存在として陰ながら応援していたものだ。  

残念ながらマイスターは2015年にその役割を終えるが、当時お店の店長でいらした木下さんが、同じ目黒の恵比寿で「Dwarf(ドワーフ)」というお店で遺志を継いでオリジナルアイテムの販売を継続されている。

 

日本の照明とコマランタン

そんなオリジナルアイテムの中でも特に私が注目するのがコマランタン(Coma Lantern)だ。  建築家の武松 幸治氏のデザインによるもので、300年の歴史を誇る岐阜提灯を作るメーカーで製作されている。 武松 幸治氏は日本建築学会賞を受賞した「新豊洲Brilliaランニングスタジアム」などの実績でも知られるが、長く横尾 忠則氏の展示会の会場構成をされたり、過去にはDREAMS COME TRUEの野外ステージを作ったり、様々な有名な店舗の内装デザインをされるなどその広範囲で柔軟なクリエイティブな活動をされてきた。

また武松氏は、マイスターのオーナーとは旧知の仲で、店舗のスタート時からブナコ(青森の工芸/ブナ材をテープ状にしたもので器や照明などが作られる)の照明やテーブルウェアをデザインしたり、オーナーが監修したイームズ展の会場構成なども手掛けていた。 そんな良い関係性がやはりこのコマランタンの完成度にも表れているように感じる。

和紙とひごで作られる伝統的な岐阜提灯をモダンデザインの舞台に引き上げたのは、多くの人が知るAKARIのイサム・ノグチだ。  いわんや日本の照明のデザインを広く世界にも知らしめたと言ってもよい。 偉大過ぎてなかなか超えられない峰ではあるが、私は個人的には、このコマペンダントがAKARIの系譜を継ぐものだと確信している。  私の過去のブログでも書いたが、日本人の建築や暮らしの中での和紙の役割はとても大きかった。 この光を優しく透過する和紙という自然素材は、とても「日本的」なるものだが、これをモダンな空間にも違和感なく溶け込む造形とプライウッドとの組み合わせを生み出すのは至難の業だと思う。  思わず郷愁を感じてしまう「独楽」をデザインのモチーフにされたのも素晴らしい。  

 

一定の照度を求める作業場のようなところには不向きだと思うが、寝室のようなリラックスすることが重要な空間や、和室、書斎のようなプライベートな部屋にもお勧めだ。 受け継がれたマイスターの名作照明が、きっとミッドセンチュリーのモダンデザインのエッセンスを部屋に運んでくれるに違いない。

MEISTER/ComaLantern A-Atype

¥30,800(税込み)/サイズ(シェード部分)Φ450×H450mm

コード長 500mm