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NIPPON PROUD にっぽんプラウド | 日本のモダンデザインインテリア 偏愛カタログ

暮らしの中のヴィンテージ和家具

暮らしの中のヴィンテージ和家具

2022.07.07

文:NIPPON PROUD  森口 潔

時代家具でもなく、アンティーク家具でもない

家具インテリアの世界の一般論でいうとアンティークは100年以上前のモノでそれ以後のモノはヴィンテージファニチャー、あるいはクラシックファニチャーと呼ぶことが多い。 「ヴィンテージ」という言葉は、ご存じのようにワインの世界で、当たり年の高級なものを「ヴィンテージワイン」として使われてきたことに始まる。 それが転じてジーンズやギターをはじめとする楽器や車、カメラなどの古くて希少価値の高いものに用いられるようになってきた。 そして、ヴィンテージ家具というと大体が北欧のしかも1950~60年代に作られたものをさす場合が多い。  

北欧、中でもデンマークのヴィンテージ家具が割と一般的に販売され始めたのは1990年代からだと思うが、瞬く間に市民権を得て、それらの家具で構成される暮らしは人気のライフスタイルになった。  日本人にも馴染の深いチークやローズウッド、ビーチ材を使い、てらいのないデザインはハンス・ウエグナーやフィン・ユール、モーエンセンなどの人気のデザイナーのレアものとも相まって大きなブームになったものである。  私もこれらのヴィンテージ家具の販売にも長く携わり、随分と「お宝の椅子」にも接することが出来たのは幸せなことだと思っている。

そんな時にふと感じていたのが、わが日本にも戦前はもちろんの事、50~60年代にもいわゆる「和家具」というものがあったはずだ、これらがなぜ日本のインテリアの世界の表舞台に出てこないのかという疑問だ。 もちろん戦後からの欧米化で、特にアメリカ的なるものはモダンであり、あこがれの対象であり、対して旧い日本の生活様式は、何か暗くて辛気臭いというステレオタイプの考えが教育にも世の中の風潮にもなっていたのは分かる。

実際、箪笥や座卓などの和家具を購入あるいは見ようとすると、大体が百貨店の上層階の片隅の仏壇売り場と隣に位置するような場所が相場だ。 それなりの価格のする仙台ダンスや黒檀や紫檀を使った「一体だれが買うんだろう?」という感じで置かれている。  だが、インテリア雑誌を見るとよく外国人が日本の掛け軸をベッドルームに飾ったり、旧い箪笥類をモダンにアレンジして使っているではないか!  古民家に少し手を入れたような前時代の建物の宿泊施設にうら若き女性たちが、「素敵ー!」とばかりに嬉々として投宿しているではないか。

ヴィンテージ和家具の新しい地平

異論反論を恐れずに言うならば、住まいや家具やインテリアに関しては、今までに刷り込まれた情報やイメージを一掃して、一度頭をクリアにしてはどうかと思う。  確かに、戦後大変な勢いで流入してきた欧米風の住まいや暮らしぶり、インテリアは素敵だし、モダンだし、垢抜けてはいる。  ただし私は何かかつて給食のメニューとして出たソフト麺のミートソースを食わされているように思えてならない。(ソフト麺は大好物だったが) つまりどこまで行っても「スパゲッティー風」なのだ。  深く考察することもなしに「〇〇スタイルって素敵!」は、とても危険なことだと思うし、選択をする私たちもさることながら提供する側の責任も大きく問われることだと思う。

そんな偏りのない地平に立って、もう一度昭和の時代に作られた家具たちを眺めてみるとなんと愛らしくも楚々とした姿を見せてくれるのだろうと思う。 インテリアを構成する素材の一つとしてもとても魅力的なアイテムだと思う。  人が住まう空間というものは不思議なもので、新しい家具や内装で、きれいに整った部屋は何か居心地の悪さを感じることが時々ある。(もちろんその感覚には個人差があるが、、、) そんな場所に、ヴィンテージ和家具を一つ置いてみる。  何か無機質なモデルルームのようだった室内に血が通う。 故郷に帰ってきたような安堵感すら感じられる。 そんな感覚を持つのは果たして、私だけだろうか。 

「ヴィンテージ和家具」のネーミングは、私が勝手に新たに付けた造語だが、それは今まで「時代箪笥」、「昭和のレトロ和家具」などと呼ばれながら、けして晴れ舞台に上らないその存在に新しい価値を見出してほしいという気持ちからだった。  「職人」と呼べる人が多い時代に作られ、有害物質などは使われず、「時間」というかけがえのない価値を纏うこれらのアイテムにどうかもう少し耳目が集まることを期待したい。 そしてたくさんの暮らし方のなかの一つの選択肢としても存在してほしい。

ヴィンテージ和家具のある風景は、温かみのある空間でもあると思います。

10年くらいで使えなくなるパソコンや通信機器、家電などと違い、これらの家具たちは、時間の経過とともに更に「いい味」を出してくれる。 ただし工業製品のように寸分の隙もないプロダクトでないとどうにも受け入れることが出来ないという人には、けしてお薦めしない。 なぜなら時間と共に角は丸くなり、金具は時に錆びていたり、全体的に傷がついていることも珍しくはないからだ。 付き合ってゆくには、昭和の時代の「おおらかさ」も必要だという事だ。

ヴィンテージ和家具C-2021-1

●商品スペック  サイズ W925×D400×H565mm

天然木/上段引き出し2杯、その下に幅なりの2杯の引き出し

価格:¥42,800(本体38,000、税3,800円)