置き畳とイグサと坐禅(ざぜん)と
文 : NIPPON PROUD にっぽんプラウド 森口 潔
イグサの効用と私が力説したい畳の価値とは
子供のころ、家の和室の掃除担当だった私は水に濡らした新聞紙をちぎっては畳の上に散らしていた。 こうするとほこりを舞い上がらせることなく掃き掃除が出来るからだ。 もっともパルプ紙で出来た新聞紙が水分と共にチリやほこりを強力に吸着することなどはずいぶんと後になって知ったのだが。
掃除が終わって風も通した部屋にはイグサの清々しい匂いと足裏に感じる感触がしっかりと記憶に刻まれている。 畳には1300年の歴史があるといわれており、日本の気候風土、高温多湿な夏や低温低湿の冬に合うあう素材として定着してきた。
世界広しといえど香りまで楽しめて人の心を平らかにする鎮静効果もある床材というのは畳以外には無いのではないだろうか。
イグサはスーパーなマテリアルなのだ
これらの特性はイグサが六角形の立体柔組織で星状細胞で構成されているがゆえのもの。平たく言えば繊維と繊維の間に中空の部屋が無数にあり、これらが空気の調湿を驚異的にコントロールしているというのだ。 しかし現実はもの凄いスピードで和室は減少し、暮らしの洋風化によって畳の需要は激減し続けている。 悲しいかな原料のイグサも輸入が80%を超えているという。 畳そのものを知らない世代すら出現しつつある。 1300年もの歴史ある日本人の暮らしに必要だったものをたったの数十年で文化財のようにしてしまうような国は、やはり民度が低いと言わざるを得ない。
置き畳がもたらす空間への貢献度は低くありませぬ
TATAMIST サイズは85㎝角で厚みは約2.4㎝ 色は全6色
新築のマンションでも和室のない物件も多い中、若干対症療法的ではあるが、私なら置き畳や畳台(畳ベッド)をお薦めする。 ちょっとごろんと横になる場所として、あるいは乳幼児の子育ての場所としてもそのクッション性と温かさがいい仕事をしてくれる。
写真のTATAMIST(タタミスト)は国産のイグサを使って福岡で作られている。 約半畳(87㎝角 厚み約2.1㎝)のサイズで一般的なたたみより目の細かい目積なのでモダンな空間にもすんなりと馴染んでくれる。 やはり「本物」の持つちからは明らかで、昨今出回っている樹脂製の物とは風合いが全く違う。 柿渋色や鼠色という日本の伝統色に染めぬかれた事も上質さを助長している。 フローリングの上に敷くだけで凛とした空気感が漂い、たちまち最良なる居場所が出来る。
個人的には漆黒の畳表のものが一番シックでかっこいいなあと思っていて、近い将来もしリフォームする機会があれば一室は珪藻土の壁とこの黒い畳表を敷き詰めたいとひそかに企んでいる。
筆者があこがれる漆黒の畳表
そして我が家での役割というと
私は瞑想や坐禅をするときにこの置き畳を使っている。 坐禅といっても正式なものを知らないのでなんちゃってなので、自己流の呼吸法ともいうべきか。 自立神経を整えるために胡坐を組み、腹式呼吸でイグサの香りも同時に鼻から深く入れて口からゆっくり吐き出す。 これだけでもかなり落ち着いた気分になる。 使うものは半畳の置き畳一枚のみ。 そして同時に「起きて半畳寝て一畳」の言葉を自らに毎日の戒めとして叩き込んでいる。
TATAMIST(フロアー畳)
●商品スペック
サイズ :870㎜×870㎜×t21㎜
カラー :鳶、鼠、秦など6色
材質 :
表 畳表(イグサ)
芯材 ケナフシート/木質ボード
裏 ポリエステル不織布(滑り止めシート)