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NIPPON PROUD にっぽんプラウド | 日本のモダンデザインインテリア 偏愛カタログ

長大作 / 坂倉準三建築研究所の低座イス

長大作 / 坂倉準三建築研究所の低座イス

2021.02.27

文 : NIPPON PROUD 森口 潔
協力 : 天童木工

リビングのソファからいつの間にかズルズルと落ちて床に座ってソファを背もたれにしてテレビを見たり、お茶を楽しんだりすることはないだろうか。
私たち日本人は、床に近いところに座り、目線を低く暮らす方がどうも性に合っているようなのだ、椅子の暮らしが日本に入ってきたのもたかだか150〜60年くらいの歴史でしかない事を考えると至極当たり前の事なのかもしれない。

先日韓国の映画「青い塩」を観ていたら、主人公を演じるソン・ガンボが住むモダンな内装の高層マンションの一室で友人と食事をするシーンが出てきた。二人はダイニングテーブルではなく大きなソファの前の床に座ってリビングテーブルで飲み食いをしていた。映画の演出だとしても、韓国の人たちも私たちと同じ様に低く暮らす事の快適さを感じているんだなと。否、大きくはアジア圏全体にその傾向があるのではとさえ思う。

そんな私たちの暮らしに合うのがこの「低座イス」。1960年に開催された長い歴史を誇るミラノ・トリエンナーレという美術展の日本ブースを構成する為に建築家の長 大作氏によってデザインされた。
氏は当時、日本のモダニズム建築を代表する一人の坂倉準三氏の建築研究所に所属。この椅子は坂倉氏のデザインした「竹籠座椅子」をリ・デザインしたものとされる。

「1960年のミラノトリエンナーレ日本ブース」

29cmのシートの高さは、直接床に座るより下肢は痺れず、立ち上がりも楽。ソリのような形状の脚部は畳や絨毯を傷つけにくく、何よりも座った時の佇まいが「美しい」。

「脚部がソリのようになっているので畳を傷つける事が少ない。」

そしてこのチェアを名作椅子たる存在として支えているのが製造元の天童木工の高い技術力だと私は思う。脚部の積層合板の堅牢さはもとより、美しい曲面をつくる背と座のファブリックの張り加工、木部のフレームに固定していく工程は、職人技がそこになければ成り立たない事は素人の私にも容易に分かる。

「背座のファブリック部分の加工にはクラフトマンシップを感じる」

私はこの低座イスをサブスクの配信サービスの映画鑑賞用椅子として使っている。パーソナルチェアのようにあまりリラックスし過ぎず、クッションの具合も2時間前後の長丁場に全く疲労感を感じさせない。
私を環境が整った良いシアターで名画を観ている気分にさせてくれるなくてはならない存在なのだ。

●商品スペック
材質:(背・脚)ナラ柾目積層合板 (背座)ファブリック
サイズ:W550 D683 H650 SH290mm
重量:7.7kg