柳 宗理(sori yanagi)のバタフライスツール
テキスト : NIPPON PROUD 森口 潔
協力 : 天童木工
日本のモダンデザインを語るうえで欠かすことの出来ないアイコン的な存在がこのバタフライスツールだ。製造元の天童木工はこのスツールをブランドマークにまでしてそのコーポレートアイデンティティを表している。
そしてこの名作を生み出した柳 宗理氏の名前もまたジャパニーズモダンデザイン黎明期に先駆者としてしっかりと刻まれている。 ニューヨーク近代美術館やルーブル美術館をはじめとする世界各地のミュージアムに収蔵されているこの逸品は、この世に産み落とされて既に60年以上経過している。 にも関わらず、現在も製造され、販売され、評価され、多くの人に愛されている。そしてどの時代においても常に「モダン」だ。
「プライウッドが作り出す美しい曲線」
イームズ夫妻とも親交があったといわれる柳氏は彼等に触発されて、形成合板、いわゆるプライウッドの素材でなにかプロダクトを生み出したいと「手」を使ってビニール板や石膏を使ってあれこれ思考を繰り返しているうちに偶然このフォルムを思いついたという。当時この形成合板の新しい技術を修練しようとしていた天童木工が製造し、1956年に銀座松屋の催事「柳宗理工業デザイン展」での発表となる。
これが「どんなデザインも使うためにある。そこに美との接点を見いだすのがデザイナーの仕事。」と話されていた柳さんによるジャパニーズモダンデザイン隆盛の発火点だったのかもしれない。
その名の通り蝶が羽根を広げたようなフォルムであるとどの解説にも見られるが、私にはこのミニマルな構造やフォルムが、何やら宗教的な佇まいにも見え、大いなる神々の愛を受け止めようと両の手を合わせているように強く感じる。
「清廉さを感じさせる存在感」
名作椅子が生まれる条件は、考えるひと、造るひと、販売するひと、その三者が均等な力関係で結ばれた時に成立するものだと私は考える。無論その先に購入する、使用する生活者が必須である事は言うまでもない。このプロダクトにあてはめれば、柳宗理氏が考え、天童木工が造り、銀座松屋が販売した事が綺麗なトライアングルを作ったのだろう。
私の “バタフライスツール” の使い方
さて、私がこの名作家具をどのように使っているかというと、少々贅沢だが「玄関椅子」としての役割を担って貰っている。オブジェとしての存在感も果たしてくれる”彼”には、ご主人の靴の脱ぎ着の時のサポートと来訪する客人を迎え入れるホテルのベルボーイのような我が家の顔になって頂いている。
柳宗理 / 天童木工|バタフライスツール
●商品スペック
材質:本体 ローズウッド板目
サイズ:W425 D310 H387 SH340
重量:2.2kg